従業員に不利益(偏見・解雇など)が生じないようにSASの教育を行うことが重要

眠気で事故のリスクが高まる

就寝中に何度も呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)」は、睡眠の質が低下するため日中に眠気がやってきて注意力が散漫となるため、ミスや生産性・活動性が低下し事故が起こりやすくなります。

さらには高血圧をはじめとする生活習慣病を罹患し、心筋梗塞や脳血管障害の発症リスクも高くなります。

運転手に重症SAS患者がいれば、自らの命はもちろん第三者も巻き込むことも危惧されます。

大型車両を長距離、長時間に渡って輸送することが多く、変則勤務で睡眠障害が起きやすい運送業において、交通事故発生率が一般ドライバーの3倍となるSASはその対応が強く望まれます。

しかし、SASに対する偏見や不適切な対応により、就業上不利な扱い(解雇など)を受けるかもしれないという不安があれば、産業医がSASへの具体的な対策を助言・指導しようと思っても、従業員からの協力は得られません。

こうなると、本人や家族からの申告が出発点となるSASにおいては致命的で、従業員にとっても企業にとってもリスクが潜在化する対策のみで、問題はかえって複雑になることでしょう。このようなことがおきないように、企業側のポリシーと対応方法を明確にし、従業員に不利益ができないことを確約しておかなければなりません。

産業医が教育を行うに際しては、以上の点に留意したうえで、企業としてSASにどのように取り組むのかを事業者、衛生管理者、産業看護職と話し合い、具体的な方法や問題点などを安全衛生委員会で協議する必要があります。

そのうえで、働く権利、安全、プライバシー保護を念頭においたうえで、教育を実施する必要があります。今後の対応(問診・スクリーニング・精密検査・治療)を明確にし、就業上で不利益が出ないことを明らかにしてから従業員へ教育が実施されれば、非常に効果があると思われます。

疾病情報として、従業員に教育すべき点は、@SASが珍しい病気ではなく、一般的に見られる病気であること(有病率は3%)、A患者本人は自覚がないこと、B専門医による精密検査で診断確定ができること、C治療法が確立しており、完治が望めること、です。